レースレポート

2015 SUPER GT 第8戦

11月14〜15日 ツインリンクもてぎ(1周:4.801379km×53周)

カルソニック IMPUL GT-R
惜しくもチャンピオン獲得はならずシリーズランク2位

SUPER GT第8戦(最終戦)は、シリーズ中最も短い250kmレースとして栃木県のツインリンクもてぎにおいてノーハンディウェイトで開催。ポイントリーダーの#12「カルソニック IMPUL GT-R」(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)は、GT-R勢最上位の5番グリッドからスタートしてハーフウェット路面から乾いて行くという難しいコンディションで順位をキープ。しかしピット作業の前後でライバルに逆転されてしまった。直後にセーフティカー(SC)が導入され追い越しができず、レース再開後も逆転はかなわず4位ゴール。残念ながらシリーズランキング2位でシーズンを終えることになった。

ポイントリーダーで迎えた最終戦の舞台はツインリンクもてぎ。短いストレートと直角ターンが連続し“ストップ&ゴーサーキット”と表現され、ブレーキやタイヤへの負担が大きいコースとなる。ブレーキ性能に優れるNISSAN GT-Rにとっては得意なコースだが、天気予報は傘マークがつきGT-Rの有利さは多少なくなりつつあるようだった。ウェットコンディションで始まった公式予選のQ1は、徐々に雨量が増していくコンディション。このレースでは“4位以上で#1 NISMO GT-Rより前でゴールすれば”カルソニック IMPUL GT-Rのチャンピオンが確定する。Q1のステアリングを託された安田は6位につけ無事Q2へ進出した。他のGT-R勢はタイヤと路面のマッチングに苦しみ全車がQ1で終了。2点差のランキング2位でカルソニック IMPUL GT-Rを追う#1 NISMO GT-Rは予選12位に沈み、この時点で安田とオリベイラは有利な状況で決勝を迎えることとなった。そしてQ2ではオリベイラがポールポジションを狙ってコースインするも、ハンドルを切った以上にクルマの向きが変わるというオーバーステアの状態で、思うようなアタックができず5位。しかしながら、20年ぶりの戴冠に向けてまずまずのポジションを確定することができた。

決勝日の午後は曇天。天候は回復傾向にあり各車がスリックタイヤでコースインしたが、全車がグリッドに整列した後に雨が降り、コースは一気にウェット路面となった。スターティンググリッドにはカルソニックカンセイ森谷弘史CEOと細川光作EVPが星野一義監督を表敬訪問。星野監督も笑顔と固い握手ででチャンピオン奪回を誓った。

ほぼ全車がウェットタイヤに履き替えて13時48分に53周の決勝レースがスタートした。激しい水しぶきを上げ水煙で前の視界を失いながらも、スタートを務めたオリベイラは何とか順位を守って周回。トップとの差は8秒近くまで広がるもそれをすぐに4秒以内に縮めるなど、周回遅れを挟みながらスリリングな展開が続いていった。空には太陽の光も見え徐々に路面の水ははけレコードラインは乾いていったこともあり、レースの1/3が終了した19周終了時から早めのピットインをしてドライバー交代、ウェットからスリックへのタイヤ交換を済ませるチームが出てきた。

上位陣では4位の#38 RC Fが22周、トップの#37 RC Fと3位の#100 NSX CONCEPT-GTが23周でピットインすると、オリベイラも24周でピットイン。ここで安田に交代してメカニックも36秒の早業でミスなくコースに送り出した。タイヤの温まっていない安田は先にピット作業を済ませていた#100 NSX CONCEPT-GTにかわされるが、しかしピット作業の直前には9秒後方にいて翌周にピット作業を済ませた#1 NISMO GT-Rが#100 NSX CONCEPT-GTの前を走行していた! #100 NSX CONCEPT-GTと安田の2台はまだタイヤの温まっていない#1 NISMO GT-Rに追いつき3台がダンゴ状態になったままオーバーテイクを試みた。

しかし直後にコースサイドのポストには「SC」ボードが掲出され、フルコースで追い越し禁止となった。2コーナー先で激しくクラッシュした車両があり、この散乱したパーツを排除することになったのだ。絶好の追い越す機会を失ったまま隊列は整理され、31周終了時点でレースは再スタート。安田は4位で前を追う。#1 NISMO GT-Rの前に出ないことにはチャンピオンは獲得できない。

レース後半は、2秒ほどの間に詰まったトップ5台によるバトルが展開された。38周目にはトップ4台が1.2秒以内となり安田も39周目の1コーナーで3位に浮上!しかしバックマーカーを挟みながらのバトルでは運不運も左右し、直後の4コーナーでは逆転を許して4位へ。このスキに#1 NISMO GT-Rはトップに躍り出ている。そしてここに5位、6位の車両も追いつき一列縦隊で終盤へ。やがて#1 NISMO GT-Rは2位に順位を戻し無理をせず周回。そして数珠つなぎのバトルは#37 RC F、#1 NISMO GT-R、#100 NSX CONCEPT-GT、#12 GT-Rのトップ4台に絞られたが、トップドライバーによる手に汗握るバトルは誰もミスをせず、誰も仕掛けられない重い展開となりそのまま53周でチェッカー。安田はトップから1.6秒差、2位の#1 NISMO GT-Rに1.04秒及ばず4位でゴールとなり、20年ぶりのチャンピオン奪回は夢と消えた。しかしながら最後の最後まで諦めないバトルを演じて2年連続のチャンピオン争いをしてシリーズランキング2位を獲得。この悔しさと経験は来季にきっと生きてくるだろう。

星野一義監督
「何回も悔しい思いをしてきたけれど、今日は悔しいという気持ちを通り越してしまった。総合的にNISMOが上で僕らは力不足だったということで結果は仕方がない。基本的にミスはなかったけれどレースを一年間戦うということは非常に難しいね。ピットインを終えて送り出した時点では『行ける!』と思ったんだけど、今はちょっと来年のことなど考えられないね」

安田裕信
「アウトラップを終えると、後ろにいたはずの1号車が前にいて驚きました。V字コーナーで100号車と一緒に1号車に追いついて、その周で仕掛けるつもりで狙っていたのですが、まさかのセーフティカー導入でチャンスを失ってしまいました。再スタート後は相手もミスせず抜くポイントがありませんでした。悔しい! この悔しさをバネにこれからのレースを戦っていくつもりです」

ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ
「僕たちはNISMOの前でゴールしなければなりませんでした。シリーズは1戦ではなくて8戦で戦うもの。ここでではなく前回のオートポリスでチャンピオンを逃したんです。今日の私のインラップは不運なことに渋滞に巻き込まれてしまいました。あと1周早く僕をピットインさせるべきだったでしょうね。僕のスティントではベストは尽くしました。クルマのフィーリングも良かった。とても難しいレースだったということです」

11月14日5位/ウェット気温/路面温度観衆:1万7,000人
15日4位/ウェット〜ドライ20℃/19℃(スタート)観衆:3万3,000人
ドライバー部門安田裕信/J.P.デ・オリベイラ 2位/74点
チーム部門2位/96点

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