レースレポート

SUZUKA GT 300KM RACE
2005年 SUPER GT 第8戦 in 鈴鹿サーキット(三重県) 1周= 5,807m

カルソニック IMPUL Z
予選の大アクシデントから9位フィニッシュ

SUPER GT最終戦(第8戦)は11月5〜6日に三重県の鈴鹿サーキットで開催され、ブノワ・トレルイエ/井出有治組のカルソニック インパル Zは、予選1回目のアクシデントによって最後尾からのスタートにもかかわらず、9位までポジションを上げてゴール。残念ながら狙っていた“3年連続優勝”という最高の形とはならなかったものの、アグレッシブな走りでスタンドを沸かせ、来シーズンに期待を持たせるレースで今シーズンを終えた。

予選

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今回のGT500クラスの エントリーは17台。カルソニック インパル Zは40kgのハンディウェイトを搭載しての参戦となった。03年、04年と最終戦の舞台である鈴鹿において優勝を果たしているカルソニック インパル Zとしては、当然ながら3年連続優勝を果たしたいところ。

5日の予選日は、朝から小春日和の好天に恵まれた。予選1回目は10時にスタート。GT500の専有走行枠は10時20分から20分間となる。セッション半ば、井出がステアリングを握りコースイン。しかし直後に、カルソニック インパル Zがスピンをしてスポンジバリアに激しくクラッシュするという信じられないような光景が、モニターに映し出された。

左にカーブするダンロップコーナーで、なぜか時計回りにスピンをした車両は、ボディ左側からコースのアウト側にクラッシュ。井出もなかなか車両から出てくることができなかった。冷えたタイヤを暖めながらの走行とはいえ、原因はコース上に出ていた砂に乗ってしまったのではないかと推測される。井出は救急車でメディカルセンターに搬送されたが、意識や会話もしっかりしており、ケガがないことは確認された。しかし頚椎等の検査をするために、病院へ向かうことになった。また車両は、コクピットから後方の部分が大破しており、セッション終了後からメカニックをはじめとするチームスタッフの懸命な修復作業が始まった。当然のことながら、星野監督の表情もいつも以上に険しい。

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決勝

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6日は前日とはうって変わって朝からどんよりとした曇り空。ガレージには美しく仕上げられたZが暖気運転を行っている。車両の修復は前夜、日付が変わるころには完了していた。あとはフリー走行でのチェック、両ドライバーのラップタイムにより、決勝レースへの進出が決まる。井出も首に湿布を貼り、さらにはコルセットを巻いた痛々しい姿を見せた。ドクターチェックの結果、井出のフリー走行が認められ、まずはブノワがコースイン。そのころ鈴鹿には細かい雨粒が落ちてき始めていた。

ブノワの1分56秒741というタイムは、結果的には2位となったが、このセッション終盤までモニターのトップに掲示されるものだった。終了直前には井出もドライブを担当。セッション終了後に再びドクターチェックを受けて、決勝レースへの出走が認められることになり、ピットには次第に笑顔が見られるようになった。「首はずっと痛いのでヘルメットを被ったり脱いだりするときは辛いですが、運転は大丈夫です」と気丈に語った井出。17番グリッドからのスタートながら、上位を目指すことになった。

決勝レース前には8分間のフリー走行が行われ、各車がスターティンググリッドに着いた。しかし雨と風は既に強くなっており、コースコンディションはヘビーウェットで危険な状態。ドライバーの一部は、コントロールタワーで競技役員に天気の回復を待って決勝レースを行うようリクエスト。さらにブリーフィングルームで待機した。
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グリッドから移動してきた井出も「雨が得意なブノワも、『これはやばい』と言ってたほど(ひどいコンディションだ)」と周囲のドライバーを笑わせたが、雨量は次第に増すばかり。

レーススタート進行は10分刻みに遅れていく。やがて監督ミーティングが行われ、発表されたレース進行は、「52周の周回数を75%、39周に短縮すること、ドライバーひとりの最長連続運転周回数は35周で変更なし」ということだった。これにより、カルソニック インパル Zのスタートドライバーはブノワが担当なので、決勝はブノワが終盤まで運転して井出が残りを担当するであろうと予想された。

雨のピークが過ぎた14時53分、セーフティカー(SC)の先導により決勝レースがスタート。あいにくの雨にもかかわらず、3万3000人のファンが息を飲んで見守る中、4周終了時点でSCが隊列から離れてバトルがスタートした。激しい水煙を巻き上げながらまぶしいヘッドライトの集団が轟音と共に移動していく。ここでピットインしてドライバー交代を行ったのが予選8〜10位の#100 NSX、#1 Z、#22 Zの3台だった。さらに予選4位の#18 NSXと予選14位の#35スープラも足元をすくわれてスピンを喫する中、ブノワは慎重になおかつアグレッシブなドライブを見せて、5周目を9位で通過した。この周ではトップ争いをしていた#38スープラと#6スープラの2台がピットインして、ブノワは7位へポジションアップ。

7周目には6位へポジションを上げたブノワは、周囲が2分16〜17秒台で周回している中、2分14秒台のタイムで追い上げる。12周目に3位走行中の#32 NSX、13周目に4位の#3 Zがピットインをすると、とうとう4位に繰り上がり、表彰台も見えてきたのだった。このころになると雨は既に上がっていた。ところがこの数周前にスプーンカーブ出口でクラッシュしていた車両のドライバーが負傷をしており、この救助作業のためにSCランとなった。

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SCが導入されるとGT500の車両はSCがコントロールラインを4回通過するまでピットインができない。このためにピット作業を遅らせる予定の車両と既にピット作業を行っていた車両との差が接近。カルソニック インパル ZもこのSCランでアンラッキーながらマージンを吐き出すことになってしまった。

20周終了の時点でSCランは解除。再びレースがスタートとなった。この時に2位走行中の#8 NSXが、その翌周にはトップの#37スープラがピットインをして、ブノワは#36スープラ、#18 NSXと3メーカー/3車種によるトップ争いを展開することになった。23周で#18 NSXがピットイン。トップの#36スープラとブノワはタイヤの磨耗が厳しいのか、水たまりを選びながらタイヤを冷やしての走行を続けていった。やがてカルソニック インパル Zはアンダーステアの症状が出始め、ブノワはコースアウトやスピンをしないよう慎重な運転を努めていた。

31周でブノワはピットイン。タイヤを交換して井出が10位でコースへ復帰した。井出は終盤の35周目に9位の#32 NSXに追いつくと36周目にこれをパスして9位へ。そして39周で混乱のレースのチェッカーを受けた。前日のアクシデントによって17位スタートとなったことを考えれば、2位までポジションを上げたことや9位でフィニッシュしたことは上出来ではあるが、結果的にシーズンを通して優勝が一度もなかったのは02年以来で、ブノワと井出にとっては初めてのこと。チームは来シーズンこそタイトル争いに加わるという気持ちを再確認して、シリーズ11位で05年シーズンを終えることになった。


ブノワ・トレルイエ選手
「レース序盤はまったく危険な状態でした。いろんなところでスピンしている多くの選手がいましたから、本当に安全にコースにとどまることに努めました。コンディションがよくなってきたところでプッシュし始めたんですが、SCを見たときには失望しましたね。ユウジは首の痛みがあったので、僕たちが取れる戦術はあまりなかったんです。でも僕自身はレースをすごく楽しむことができました」
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RACE RESULTS
Sunday,6 November, 2005
SUZUKA Circuit [ Start 14:53 〜 39Laps Rain / Wet ]
Pos Car Name No. Driver Name Time/Diff
1 ZENT セルモ スープラ 38 立川 祐路 / 高木 虎之介 1:41'36"807 
2 ザナヴィ ニスモ Z 1 本山 哲 / R.ライアン -1"538 
3 エッソウルトラフロースープラ 6 脇阪 寿一 / 飯田 章 -23"605 
4 G'ZOX・HASEMI・Z 3 金石 年弘 / E.コマス -31"772 
5 OPEN INTERFACE TOM'S SUPRA 36 土屋 武士 / J.コートニー -32"9252 
6 TAKATA 童夢 NSX 18 道上 龍 / 小暮 卓史 -33"804 
7 OPEN INTERFACE TOM'S SUPRA 37 片岡 龍也 / 山本 左近 -39"778 
8 モチュール ピットワーク Z 22 M.クルム / 柳田 真孝 -41"345 
9 カルソニック インパル Z 12 B.トレルイエ / 井出 有治 -45"902 
10 EPSON NSX 32 松田 次生 / A.ロッテラー -1'00"621 

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星野監督、R390 GT1でMINEを走る!

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10月31日、山口のMINEサーキットで開催された「ルマン・クラシック・ジャパン」というイベントに星野一義監督が登場。98年のル・マン24時間で総合3位に入ったニッサンR390 GT1(ゼッケン32)をドライブしてファンを喜ばせた。これは近代ル・マンカーによるデモ走行で、マツダ787B(91年優勝車、ドライバー:寺田陽次郎)、ポルシェ911 GT1(98年優勝車、クラウス・ビショフ=独ポルシェミュージアム館長)、アウディR8(04年優勝車、荒聖治)が、まずは1台ずつ2周して、最後にはポルシェカレラGT(中谷明彦)の先導で4周して本番さながらのバトルを演じたもの。
星野監督も他メーカー車と一緒に走るのは久しぶりで、イベントを楽しんでいたようだった。

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