第3戦 ジャパンGTチャンピオンシップ マレーシア

JAPAN GT CHAMPIONSHIP MALAYSIA
第3戦 in セパン・インターナショナル・サーキット(マレーシア) 1周= 5,542m

カルソニック IMPUL Z
初PP獲得も無念のリタイア

JGTC第3戦は6月18〜19日に、灼熱のマレーシア、セパン・サーキットで開催され、ブノワ・トレルイエ/井出有治のカルソニック IMPUL Zは、チーム初のポールポジションを獲得して、決勝レースでも優勝を狙って走行していたが、道を譲ったバックマーカーとまさかの接触で足回りを壊し、残念ながらリタイアを喫してしまった。

予選

昨年はSARSの影響で大会開催が残念ながら中止となったマレーシアラウンド。2年ぶりの開催となる今年は、第3土曜日が国民の休日と制定されたこともあり、日曜日ではなく土曜日に決勝レースが行われることになった。

予選の朝10時過ぎからサーキットはスコールに見舞われた。11時45分からの予選1回目は、雨は完全に上がっていない状態。最初のGT500だけの20分間のセッションで、カルソニックIMPUL Zのブノワ・トレルイエは14番手と下位に埋もれた。しかしその後のGT300走行枠から徐々にコース上の水がはけ始め、12時25分からの混走枠では後半になるほどタイムが上がっていった。コースが混雑する中、残り5分でブノワは2分13秒494の好タイムを出し、この予選1回目はトップから0.3秒落ちの4位というポジション。ブノワにとってセパンが初めてのサーキットということを考えれば、これは驚異のタイムだった。チームもブノワにコースに慣れてもらおうと、走行周回数が自ずと増える予選アタッカーに任命したのだった。

予選2回目のGT500占有枠は17時40分からの20分間。コースはほぼ乾いているが、ところどころにまだ水が滲みた状態。朝の雨でラバーグリップは落ちてしまい、このセッションも後半のタイムアタック合戦が面白くなりそうだった。まず井出が予想される基準タイムクリアのタイムを出してタイヤをキープ。1セット目のタイヤが“おいしい”状態でブノワに渡した。ブノワは残り12分の時点で2分0秒946で、まずトップタイムをマーク。すぐに2台にタイム更新されるが、さらに2セット目のタイヤに交換して残り3分で2分0秒486にタイムアップ、2位に。ブノワはアタックを続け、翌周には2分0秒166をマーク。堂々ポールポジションを獲得した。なおこれはチームにとっての初のポールポジション(93年カルソニックGT-RはNISMOメンテナンス)だった。「午後はまず有治がバランスをチェックしてくれて、タイヤのいいところを残してくれたので、自分がいいタイムを出せました。セットアップも良かったです。初めてのサーキットでポールポジションが取れてとてもうれしい」とブノワ。

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決勝

セパンのレースでは、毎年暑さのために熱中症にかかる選手も出るために、今年は少しでも暑さのやわらぐ夕方にスタートして、たそがれ時にゴールするという方法が試みられることになった。それでも17時の時点での気温は32℃、路面温度44℃と非常に蒸し暑い。

2万4270人の地元ファンの歓声の中、17時15分に54周の決勝レースがスタートした。第1コーナーでトップを守ったブノワだったが、高速S字の進入でソフトタイヤを履く#36スープラに先行を許した。しかし2周目のヘアピンでブノワはトップを奪回すると、徐々に後続を引き離していった。8周目ごろから周回遅れが出だすが、ブノワは慎重にこれらをパスしてトップを譲らない。

先に動いたのは#36スープラだった。25周目と早めににピットイン。翌週にブノワもピットインして井出にステアリングを託した。この際、ピットワークに少々時間がかかり、井出は#36スープラの前でコース復帰したが、1コーナーで逆転を喫した。井出が「後半は長いので、GT300を1台ずつていねいにかわしていこう」と考えていた32周目、#36スープラとの差は3.8秒。しかしヘアピンコーナーで2台のGT300車両をかわしたように見えた井出だったが、譲ってくれたはずのポルシェがタイヤかすに乗ってしまい井出の目の前を横切りコースアウト。そしてコースに戻ろうとして井出の進路を塞ぎ、このボディ左に井出が追突する形となった。左フロントの足回りを壊し左リヤのホイールが割れたZは、サンドトラップに捕まり動くことはできなくなった。「その周でピットインする予定だったからもっとゆっくり走ればよかったんだろうけど」とポルシェのドライバーも唇を噛んだが、カルソニックIMPUL Zのいないレースは虚しく続いていくだけだった。

「何とか壊さないで後半勝負をするつもりだった」と井出の言ったとおり、レース後半はトップの#36スープラがポジションを落とし、さらに後方を走行していた#39スープラが余裕の走りで優勝を果たした。調子の戻ったブノワ、そして何より優勝に対して欲の出てきた井出、7月17〜18日に行われる第5戦十勝でのレースにますます期待がかかる!

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星野監督のバースディイベント開催

7月1日に57歳のバースディを迎える星野一義監督のセパン恒例のイベントが行われた。「カルソニックのスポンサードがあって、ここまで続けられています。これからも強いチームにしていきたい」と星野監督があいさつ。
毎年、会場に集まったどの選手が星野監督にケーキをぶつけられるか話題になるが、今年もやはり誰もできずじまいとなった。しかしこれには伏線があり、「ブノワ! やったら次からFニッポンのシートはないぞ」との脅しも効いたようで、会場は大爆笑。
星野監督の実家が和菓子店だったこともあり、「昔から羊羹を切るときも物差しはいらなかった」ときれいに切り分けられたケーキは、会場に集まった関係者に振る舞われた。
この日はチームがポールポジション獲得、星野監督の長男、一樹選手が所属するチームのZがGT300クラスでポールポジションを獲得するなど、いいことずくめだったのだが……。

ブノワ、前週のル・マン24時間で4位

マレーシアの前の週に行われたル・マン24時間には、ブノワがエリック・コマスらとペスカローロ・ジャッドで出場し、表彰台こそ逃したものの4位でチェッカーを受けた。「クルマはアウディよりちょっと遅かったけどトラブルもなく3位を走ってたんだ。でも朝にタイヤバーストがあってね。エリックと組むのもプロトタイプカーを運転するのも初めてだったけど、エリックって本当にすごいね。もう40歳だってのに(笑)。僕はル・マンの前のFニッポンの決勝から調子は上向きだったし、ル・マンのテンションはセパンでも持続させてるよ」

いっぽう井出は、ニュルのコースに驚いた

レースへの参戦こそなかったが、井出は前の週にドイツのニュルブルクリンクを訪れていた。TVやNISMO公式webサイトのレポーターとして、かつてF1も開催されていたニュルのノードシュライフェ(北コース)を1BOXではあるがドライブした。まるで峠道のようなコースでは、ときどき「これでレース本当にやるんですか?」とか激しいアップダウンでは「道が壁のよう!」など感嘆しながら走行した。取材に訪れた24時間レースこそ、雨が降ったりやんだりであいにくの天候となったが、「レースでも走りたくなりましたけど、まずはスポーツカーで思い切り飛ばしてみたい」と井出は目を輝かせていた。昨年このコースをチューニングカーで走行した本山哲選手同様、近い将来、チャンスはある?

セパン攻略の強い味方は?

知らないコースを手っ取り早く覚えるのは、レースゲームが一番? 以前、初めて井出選手がセパンを訪れたときはレースゲームでコーナーを覚えたようで、井出もブノワに「初めて実車で走っても感覚が同じだからいい」とアドバイスをしたという。ブノワも早速プライベートスポンサーメーカーのゲームをゲットして事前にコースを学習。「でもねF1のゲームだったから、ちょっとGTよりスピードが速かったみたい」と笑っていた。

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