レースレポート
SUPER GT 第4戦6月24〜25日 セパン インターナショナル サーキット(1周:5.542km×54周)
24日 : 曇り / ドライ、6,000人    25日 : 晴れ / ドライ、3万6,000人

新コンビ初の3位で表彰台を獲得
一樹は「エキサイト」賞をゲット!

予選4位/決勝3位   ドライバー部門:7位/27点、チーム部門:7位/24点  ※暫定結果:第3戦の最終結果が未確定


 汗ぐっしょりでZから降りて来た一樹をブノワが笑顔で出迎える。4戦目にして勝ち取った表彰台。ブノワも一樹も見事なレース運びを見せた。しかしポディウム下には星野監督の姿はなかった。ガランとしたピット奥でひとりで、安堵の表情を浮かべていた。そこへ本山哲が祝福に訪れた。そして師弟はガッチリと握手。やがて星野監督はタバコを吸いに控え室にひとり入っていった。喜びを噛み締めながら。


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 「S耐で泣いていたときとはもう違いますよ!」と一樹が誇らしげな表情を見せた。04年のS耐最終戦SUGOで、ST3クラスでチャンピオン獲得を決めながらも、自分のふがいない走りで優勝できなかった。そのとき人目をはばからずに号泣した男は、ひと回りもふた回りも強くたくましくなっていた。

 GT500に昇格して最初の2戦で大きなミス。さらに第2戦と第3戦のバトルでも悔しい思いをした。しかしそれが糧になった。セパンでは安定したタイムをマークして3位をキープ。さらにドリンクがない状態だったにもかかわらず、レース後にはケロリとした表情でZから降りて来たのだ。「今回はレース前から『クールスーツは使わない』と言われていたし、気合も入っていたので全然問題なかった」。

 GT500で初めての表彰台を獲得したことで、「エキサイト」賞を獲得。「(表彰台は)チョーうれしい! 早く真ん中に立ちたいです」と一樹の表情からは笑顔が絶えなかった。

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 今回、カルソニック インパル Zのハンディウェイトは10kgと、十分に勝ちを狙える位置にあった。しかし23日のフリー走行では、いまひとつセッティングが決まらず、1回目は8位で2回目は6位。今年のセパンは天候不順で、連日ぐずついた天候。全体的に曇りがちで、時おりスコールと不安定だった。

 24日の朝も弱い雨が降ったが、予選1回目の始まる11時には路面もほぼ乾いていた。気温は28℃と低い。11時20分からGT500の専有走行枠で、開始11分でブノワが1分59秒700を出して2位につける。翌周、トップの#8NSXがタイムを更新して1分58秒642.続けてブノワも1分58秒849にタイムを縮めるがここまで。2位でスーパーラップ(SL)に進出を決めた。

 予選2回目のSLは17時20分に開始。9番目にブノワがコースインした。アタック前半はターン7でコースからはみ出し、それまでのトップと同タイム。しかし後半はターン11などでバランスを崩しタイムロス。3位にポジションダウンし、さらに#8NSXがトップを守ったために、決勝は4位スタートとなった。ピットに戻ってきたブノワは、肩を落としてスタッフに謝って回る。「まだセッティングがベストじゃない」と自信なさげな表情を見せた。

 24日、決勝日はこのレースウィークで最もいい天気になった。朝から薄い雲はかかるものの概ね晴れ。気温32℃、路面温度39℃とようやくセパンらしい天候になってきた。16時4分に54周のレースがスタート。3位の#1SCをかわして3位に上がったブノワは、#22Zをぴたりとマークしてポジションをキープ。トップの#8NSXがじわじわと差を広げていき、周回遅れをかわすタイミングもあり16周目にはその差は6秒1まで引き離された。しかしそこから逆に差は縮まり、20周目に3秒9まで接近。#8NSXは早めの21周目でピットインを行う。しかもタイヤ交換はリアの2本のみにして28秒9とピットイン時のタイムロスを少なくするという作戦に出た。

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 25周でトップの#22Zがピットインすると、ブノワは自動的にトップに繰り上がった。ブノワは30周目にピットインを行い、一樹に交代。タイヤは定石どおり4本交換してかかった時間は37秒2。一樹は4位でコースイン。すぐに3位の#24Zがルーティーンピットインをしたために3位に繰り上がった。トップとの差は20秒、2位#22Zとの差は10秒。さらに4位#36SCとの差は5秒。一樹はポジションをキープできるのか?

 実はピットイン時にスタッフがドリンクをセットし忘れてしまった。一樹もピットアウト時にそのことに気がついたが、父親譲りの“気合”で勝負することにした。カルソニック インパル Zは、今年もクールスーツを使用しない。クールスーツは氷が溶けてしまうとお湯が循環することになり、却って体力を消耗させる危険性もある。チームではクールスーツの代わりに、クールボックスに入れられたドライアイスと氷から発生する冷気をファンで循環させるシステムを採用している。

 一樹は落ち着いて2分2〜3秒台のラップタイムを刻み、トップとの差をキープ。さらに後方の#36SCとの距離も5秒程度に保ったまま周回を重ねていった。また#36SCには#1SCが追いつきバトルを展開したことも一樹には好都合だった。終盤に後方の2台のSCが接触&ペナルティとトラブルで戦列から離脱。一樹は3位のポジションを守り、うれしい初表彰台を獲得した。


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ブノワ・トレルイエ
「序盤からマイケル(クルム)についていって、チャンスがあれば前に出ようと考えてプッシュしていました。もちろんマイケルもプッシュしていたわけですが、チャンスになると(周回遅れに引っかかって)渋滞、またチャンスになると渋滞というわけでなかなかうまくいかなかったんです。で、チャンスが来た! と狙っていたら、相手がピットインしてしまいました。抜けなくて残念(笑)」

星野一樹
「水がなくてビビリましたが、気合で初ポディウムを獲得できました。乗る前はビッグプレッシャーでしたが、乗ってしまえばドライビングに集中できました。後ろのSCとの距離は分かっていましたが、もし追いついてこられても逃げる自信はありました。岡山と富士のレースで悔しい思いをしましたが、その悔しさがバネになりました。
自分に足りない部分も分かったし、毎戦が勉強です」

星野一義監督
「星野(一樹)に関してはまだまだ信用していないから、ブノワ(の周回数)を伸ばしたんだ。サバイバル戦のように生き残っての結果じゃなくて、ちゃんと走っての結果だから、表彰台に立てたというのは良かった。成長していかないとやばいってことを本人も分かってると思うしね」

Rd. 4 JAPAN GT CHAMPIONSHIP MALAYSIA
- Sunday,25 June, 2006 Sepang International Circuit [ 16:04 〜54Laps Fine / dry]
Pos No. Car Driver Time / Diff
1 8 ARTA NSX 伊藤 大輔 / ラルフ・ファーマン 1:51'41"405 
2 22 MOTUL AUTECH Z ミハエル・クルム / リチャード・ライアン -5"663 
3 12 カルソニック インパル Z ブノワ・トレルイエ / 星野 一樹 -25"120 
4 100 RAYBRIG NSX セバスチャン・フィリップ / ピーター・ダンブレック -44"161 
5 23 XANAVI NISMO Z 本山 哲 / 松田 次生 -51"637 
6 18 TAKATA 童夢 NSX 道上 龍 / 小暮 卓史 -1:20"454 
7 3 イエローハットYMS トミカ Z 横溝 直輝 / ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ -1:28"867 
8 24 WOODONE ADVAN KONDO Z エリック・コマス / 柳田 真孝 -1:30"838 
9 32 EPSON NSX ロイック・デュバル / 武藤 英紀 -1:34"934 
10 25 ECLIPSE ADVANスープラ 織戸 学 / 土屋 武士 -1Lap 
7月26〜27日 ツインリンクもてぎ
7月22〜23日  スポーツランドSUGO

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星野監督、恒例のバースデーパーティ開催

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予選のスーバーラップ終了後、ピット裏の控え室で、恒例行事となった星野監督のバースデーパーティが開催された。今年もフルーツたっぷりの大きなケーキが用意され監督はニコニコ。カルソニックサーキットレディからプレゼントを渡され、いつも以上に機嫌がいい。

「来年還暦ということで、今はまだ誕生日(7月1日)前だから58歳と何日か。でも気分は30代前半」と監督。実家が和菓子屋さんだっただけに菓子の扱いは上手と、今年も自分でケーキをカットしてドライバーや関係者に振る舞います。お祝いに駆けつけた松田次生がケーキの顔ペシャを受ける(この日、自分のバースデーでも顔ペシャを受け、合計2回目)など、終始和気あいあいとしたムードでした。


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