このオフは若いころの夢がかなった
でもGTに関しては何も言わない

3月頭の鈴鹿モータースポーツファン感謝デーでは、ホンダの往年のロードレーサーRCに乗せてもらえた。僕が中学生だったころ乗りたいと思っていた憧れのバイクだよ。高橋(国光)さんや北野(元)さんといった先輩たちがライダー時代のバイクで、それは夢みたいなことだった。前から北野さんに「乗りたい」と言っていたんだけれど、北野さんがホンダの社長さんに話してくれたんだろう。その話が来た時はもう舞い上がっちゃって。

しかも真っ黒のワークスのスーツまで用意してくれて、さらにアライヘルメットがフルフェイスのヘルメットまで準備してくれた。乗る前から身体がしびれちゃって感動のあまり涙まで出ちゃった。妻と娘も鈴鹿に呼んで晴れ姿を見てもらった。

初日は6気筒のRC166(250cc)に乗ったけれど、エンジンは1万7,000回転まで回るわけ。もう50年も前のバイクなんだけどね。6気筒ひとつひとつにキャブ(レター)が付いていて、マフラーもそれぞれから伸びている。集合管なんてないんだからね。その音がすごくって、ブンブンというんじゃなくて、ア、ア、ア、ア、ア……という具合でね。でも翌日はオイル漏れで乗れなかったんだ。すると4気筒(RC164)に乗ってた北野さんが戻ってきて、「乗れ!」と。先輩たちに感謝だね。また乗せてもらえるんだったら、お金を払ってでも乗りたい気持ちだよ。

いやしかしトヨタや日産が大衆車の販売競争をしていたころ、高速耐久試験用ということで鈴鹿サーキットを造って、F1に挑戦していったホンダという会社は、日本のモータースポーツに本当にすごい貢献をしているよ。

去年のNISMO FESTIVALでは日産R382に初めて乗せてもらった。2輪のカワサキから4輪の日産に移籍したけど、いきなりワークスカーというものには乗せてもらえなかった時代。先輩たちがドライブするワークスカーには憧れたものだよ。エンジンは6リッターのV12で、大爆音を背中に感じて走れた。そんな時代に育ったものだから、今のレースカーはガッカリだよね。やっぱりターボじゃなくてNAの3リッターぐらいじゃないといい音はしないよ。いい音の出ないマシンじゃつまらない。コンサートだって生でホールで聞かないとダメじゃない? 何でもそうだと思うね。

今年の体制発表では、何も抱負を語らなかった。男は黙って勝負するってね。毎年毎年「チャンピオンを目指して」なんて言って来たけど、本山やブノワ(トレルイエ)、JPを擁しても取れない。本当にSUPER GTはどう戦っていけばいいのか分からない難しいシリーズだよ。その分フォーミュラの方が分かりやすいし、勝ち方も分かっているつもり。だから正直何と言えばいいのか困っちゃったというのが本音だね。

今年はヤン(マーデンボロー)が安田と組む。彼は去年GT300やF3でもいい走りを見せていた。だから僕も彼を磨いてみたいと思った。日産からも育てて欲しいということだったからね。いい素材だと思うよ。フォーミュラに初めて乗った時はクラッシュしたけど、GTでは意外なほどかなり慎重だね。テストから見ているけれど、時間がかかりすぎてもいけないというか損だよ。みんなが注目している時から速さを見せないと。内に秘めているものはあるから、開幕からオッ、すごい! というものを見せてもらいたい。遠慮はいらないのだから。

安田も若いドライバーと組むことでお尻に火が付いている。もう後がないぞっていう相当なプレッシャーを感じているだろう。でもプレッシャーのないスポーツなんてこの世にはない。だから自分で取り除いていかないと。プレッシャーというのは、取り除いても次から次に感じるものだけど、それに耐えて結果を出していかなければならない。お互いが刺激し合って高めていかないと。ただ自分の身体は自分で守っていかなきゃいけない。もっと体力をつけて健康でなければならない。僕は食事の量を腹八分にして、出張の日も毎日歩いている。身体があってのシーズンだしね。

今年もいよいよ開幕だけど、多くのファンに元気付けられると思う。そんな熱烈なファンの期待に応えられるように、スタートから結果を残せるようベストを尽くすので、ぜひサーキットで応援してください。今年は黙ってシーズンを熱く戦います!

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