完璧なレースだった真夏の富士

富士の優勝は、やっとカルソニックカンセイさんに顔が立ってホッとした。森谷社長や多くの役員さんが応援に来てくれたレースだったし、何が何でも勝ちたかった。本当に最高に感謝しています。しかし結果論ではないけれど、すべてがうまくいった完璧なレースだった。SUGOでも同じようにみんなが全力で一生懸命やっているのに正反対の結果だった。実力があっても力の差は出てしまうもので、運というのを味方にできるかできないか、改めてその差は大きいと感じたよ。「前回は惜しかったね」なんて何度も周囲から言われたけど、やはり勝つということはとても大事。

50年レースをやってて自分の力では運を呼び込めないときもある。SUGOでは予選のタイミング、プロペラシャフトのトラブル、アクシデント……悪いことが全部出た。これは監督が悪いのであって、だから誰にも何も言わなかった。富士でも無言を貫いた。そして優勝した。今回は安田の眼が違った。勝つんだという気持ちがすぐに伝わったよ。去年の最終戦ではとても悔しい思いをしたんだけれど、あのレースが終わった後はガソリンが(車両の燃料タンクに)余っていたんだよね。でも今回のレースはガス欠寸前だった。完璧な計算だった。それだけTEAM IMPULもすごい組織になったんだよね。

僕は常にドライバーの味方だから、一番いいものを与える。最高の材料、つまり“大間のマグロ”を出す。でもそのチャンスをつかむのはドライバー次第。安田にはこれまでも自分で努力しろ、自分で見つけろと言ってきた。だからJPの車載映像を見て走り方を研究してきたらしいけれど、プロは速く走るしかない。いろんな努力は必要だよ。 安田は身体が華奢だから、もっと肉を食って消化器を強くして走って筋肉をつけないと。JPなんて自転車で1日200kmも走っているそうだが、どんどん食べて走って身体を作ることもドライバーには大事なことだよ。特に暑さの厳しいレースが続くこれからは特にね。

僕の実家は潰れた。だから頼る場所はなくひとりで必死になってやってきた。昔のプロ野球で「グランドには銭が落ちてる」と言った監督がいたが(鶴岡一人監督)、まさにそう。金を稼ぐのがプロのドライバーであって、相手を抜けば賞金が多く入るんだって気持ちで頑張って来たし、息子の一樹にも「自分の力で頑張れ」と言ってきた。

ところで、富士でもファンの声援は大きな力になった。本当にうれしいね。次の鈴鹿からもファイト!で巻き上げる。1号車を追い上げるのは12号車しかいないんだから。くじけそうにもなるけど、1号車を苦しめられるようこれからも戦って行くよ!

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