モノづくりで挑む

革新的な製品は、
一丸となったチームから生まれる

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マレリの強みのひとつは、クルマに関わるさまざまな製品を生みだすための幅広い技術を保有していること。ディーゼル車用として世界初※となる板金タービンハウジング「CK-SMiTH」は、その強みを活かして技術を結集。精度を極限まで追求することで誕生した。
(※2017年10月現在、マレリ調べ)

[ ディーゼル車用板金タービンハウジング「CK-SMiTH」開発 ]
鹿又・横嶋・下田・永野

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こんなの、つくれるわけない
こんなの、つくれるわけない こんなの、つくれるわけない

「こんなの、つくれるわけない」

近年、クルマの燃費向上のために、小排気量のエンジンにターボを搭載したダウンサイジングターボが増加する傾向にある。そのターボを構成する部品のひとつ、タービンハウジングは、エンジンからの排出ガスをタービンホイールへ届ける導管と、羽根を回すための吹き出しノズルの役割を果たす。ターボ自体の性能を左右する重要な部品だ。

エンジンから排出される約800〜900℃もの高温のガスが通過するタービンハウジングは従来、型に金属を流し込む鋳造でつくられていた。しかし、金属が分厚いためにガスの熱は逃げてしまい、その後の排出ガスの浄化に悪影響を及ぼし、クルマ自体の環境性能にも関わってくる。熱いガスを、できるだけ熱いまま流したい――。

「排気製品で培ってきた二重管構造が使えるのではないか」(横嶋)。つまり、鋳物ではなく板金化して魔法瓶のような二重のつくりにしたら、熱は逃げにくくなる。環境にもやさしくなる。最初、横嶋は社内に既存の技術もあるし「これならなんとか製品にできるのでは」と考えた。早速、技術開発(試作)の担当者に相談を持ちかける。しかし、「こんなの、つくれるわけないだろ」(鹿又)と、あっけなく突き返されてしまう。

この人たちは正気か… この人たちは正気か…
この人たちは正気か… この人たちは正気か…

「この人たちは正気か…」

求められていたのは、昇温性能や耐久性だけではない。ガス通路などの微妙な位置のズレがターボ性能に影響を及ぼすため、ミクロン単位の寸法精度が求められる。そして、一体成形の鋳造とちがい、板金の場合には複数の部品を組み合わせて溶接する必要がある。さらに、「溶接して接合したあとに、中央部の円形の部分などを機械加工でつくらなければならない。今まで手がけてきた排気製品にはない、新しい技術要素でした」(鹿又)。

一度は断られた横嶋だったが、「“できないはない、できる方法を探せ”が、当時のぼくの部署の心得でしたので」、あきらめずに何回も鹿又たちのところへ通った。「形にしたい、製品にしたいという横嶋の想いが、とても強かったのだと思いますよ」(鹿又)。「どうやったらできるか考えてみよう、ということになって」(永野)。「最初のうちは、片足突っ込んでしまった、あれ両足かなと思っていたら、いつの間にか首までどっぷりこのプロジェクトに浸かっていて。あれ、抜けられない!と(笑)」(鹿又)。

試作は始まっていた。このタイミングで量産の立ち上げを担当する下田が加わる。そして「この人たちは正気かな…」とつぶやいた。

トラブルがあった日も、今日は面白かったと言って帰る トラブルがあった日も、今日は面白かったと言って帰る

「トラブルがあった日も、今日は面白かったと言って帰る」

トラブルがあった日も、今日は面白かったと言って帰る
トラブルがあった日も、今日は面白かったと言って帰る
トラブルがあった日も、今日は面白かったと言って帰る トラブルがあった日も、今日は面白かったと言って帰る
トラブルがあった日も、今日は面白かったと言って帰る トラブルがあった日も、今日は面白かったと言って帰る

「トラブルがあった日も、
今日は面白かったと言って帰る」

下田が呆れるのも無理はなかった。「試作の段階では、腕の立つ職人さんもたくさんいるので、難しいモノでもつくろうとすればなんとかできてしまうのです。でも、それを今度は量産で、だれが作っても同じモノを、かつ短い時間でつくろうとすると、またちがうハードルがある」(下田)。

スケジュールも予算も、当然のことだが限られている。さらに、プレス、溶接、切削、バリ取り、洗浄、計測、検査。各々の工程で目標数値があり、求められる高く厳しい精度があった。「求められている寸法精度に基づいて、工程ごとに“これだけしか誤差は許されませんよ”というのを振り分けていくと、物理的にあり得ない数字になってしまう」(永野)。それでも「そんなことはないはずだ」と、他部署にいた機械加工のエキスパートから知恵を借りるなどして、次々に生まれる課題を一つひとつ潰していった。

試作は、量産化のために、すべての工程からあらゆる課題を洗い出し、それを徹底的に解決するのが役目。当然、日々いろいろなところで問題が発生する。それでも「トラブルがあった日も、今日は面白かったと言って帰る」(永野)。

トラブルがあった日も、今日は面白かったと言って帰る トラブルがあった日も、今日は面白かったと言って帰る

「プロジェクトの指揮を執られた方がよくおっしゃっていたのです。素晴らしい心構えだなと。殺伐とした中に少しのすき間が生まれるんですね。まあ、ご本人は本気で思っておられたのかもしれませんが(笑)」。

とりだけ苦労するようなことはしない とりだけ苦労するようなことはしない
とりだけ苦労するようなことはしない とりだけ苦労するようなことはしない

「ひとりだけ
苦労するようなことはしない」

開発の調整は、量産がスタートするぎりぎりのタイミングまで詰めの作業が続いた。試作の最終工程で行っていた三次元測定機による計測は、数百回にも及んだ。「いつもなら量産準備に入ると、試作担当はお役御免になって次の開発に取りかかるのですが、今回は量産に移ってからも、一丸となって取り組みました。すごくチームワークが良かったですね」(鹿又)。「ひとりだけ苦労するようなことをしない、という想いがみんなにあって。量産の現場でもみんなで手分けして対策を講じた」(下田)。「量産の装置は、スピードがすごく速いんですよ。初めて見た時は、できちゃうんだなと感動しますね」(永野)。

厳しい要求精度をクリアし、市場に投入された製品は、“Calsonic Kansei Sheet Metal innovative Turbine Housing”の頭文字から「CK-SMiTH」と名付けられた。結果的に、従来の鋳物製品と比較して15%の軽量化も実現。「東京モーターショー 2017」でも公開され話題を集めた。さらに、2017年度第17回ステンレス協会賞で最優秀賞を受賞。名実ともにその技術が認められる結果となった。

「技術者として、やったことのないことを突き詰めて取り組み、モノにして見られるというのは財産。やり甲斐を感じました」(下田)。「いろいろな人がどんどんアイデアを出して進めていく。その時の早さがうちの魅力」(永野)。「集中する時は徹底的に集中して課題に対処する。この会社はそういうフレキシブルな仕組みになっているところが好きですね」(横嶋)。

「経験したことのない大きな壁があったとしても、一丸となって乗り越えるところが強み」(鹿又)。イノベーションの現場は熱い。

とりだけ苦労するようなことはしない とりだけ苦労するようなことはしない
とりだけ苦労するようなことはしない