モノづくりで挑む

圧倒的なスピードで、
こだわりの技術が生まれる理由

モノづくりで挑む

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クルマのコックピットに乗り込めば、必ず目にすることになるのがインストルメントパネルだ。マレリ(旧カルソニックカンセイ)では、この重要な部分を、本革の一枚使いでラッピングする技術を新たに開発した。圧倒的な上質感を空間にもたらすことができるこの技術が、どのようにして生まれたのか、その想いを辿る。

[ インストルメントパネル・ラッピング技術開発 ] 吉田・兼政・杉本・高山

モノづくりで挑む
初めて扱う本革は、紛れもなく“生き物”でした 初めて扱う本革は、紛れもなく“生き物”でした
初めて扱う本革は、紛れもなく“生き物”でした 初めて扱う本革は、紛れもなく“生き物”でした

「初めて扱う本革は、
紛れもなく“生き物”でした」

埼玉・吉見にある広大な生産技術センター。その敷地内の道を進んだ奥に、ひっそりと「内装技術開発棟」が建っている。社員であっても一部のメンバーしか入ることの許されないこの特別な棟が、ラッピング技術開発の舞台だ。

しかし、本革の一枚使いでラッピングするという未知の課題がもたらされた時には、まだこの建物さえ存在していなかった。「とにかく本革という素材を扱うのが初めてでしたから、私たちとはまったくの異業種の靴の工場や革の研究所を訪ねることから始めました」(杉本)。調べて連絡を取り見学のお願いをする。まずマレリ(旧カルソニックカンセイ)が何の会社かを説明するところからのスタートだ。

「本革にはどんな特徴があって、どのように管理したらよいのか。まったく予想がつかなかったので、どんどん情報を仕入れていきました」(吉田)。そして、わかったことは「合成皮革とはまったくの別物、本革は“生き物”だということ。種類が同じでもそれぞれに特性や個体差があって、硬さや伸びなどがちがうんです」(兼政)。しかし、素材に触れ学んでいく中で、開発の方向は徐々に見えてくる。確かに何もないところからのスタートだったが、マレリ(旧カルソニックカンセイ)の長年培ってきた数々のモノづくりの技術が支えになっていく。

将来を見越して、最初から高い目標値で挑んだのです 将来を見越して、最初から高い目標値で挑んだのです
将来を見越して、最初から高い目標値で挑んだのです 将来を見越して、最初から高い目標値で挑んだのです

「将来を見越して、
最初から高い目標値で挑んだのです」

実験・技術・開発のそれぞれの部署から先鋭メンバーが集結し、プロジェクトが本格的にスタートする。3Dプリンターによるチェック、試作型、正規型での検討と、量産までの道のりは遠い。しかし、開発にはスピードが求められる。より早く、リードタイムを短縮するためには何ができるかを突き詰めていった。

当然、クルマに使用するものなので、品質から安全基準まで、クリアしければならない検査項目は膨大な数に達する。例えば「直射日光が当たる、内装の中でも特に過酷な部分に使用するもの」(吉田)であり、「革メーカーから輸送する間にも、温度変化で寸法が変わっていないか細かくチェックする必要がありました」(高山)。世界中のどんな環境でも適応し耐えられるものでなくてはならない。

そうした厳しい条件の中でもメンバーは、コスト目標や工数目標など、すべてに高い目標値を立てて挑んだ。「最初から将来を見据えて高い目標にしたんです」(吉田)。この時、すでに量産化を達成した後の、さらにその先を思い描いていた。

将来を見越して、最初から高い目標値で挑んだのです 将来を見越して、最初から高い目標値で挑んだのです

「将来を見越して、最初から高い目標値で挑んだのです」

将来を見越して、最初から高い目標値で挑んだのです
将来を見越して、最初から高い目標値で挑んだのです
みんな想いがある、中途半端では終わりたくない みんな想いがある、中途半端では終わりたくない
みんな想いがある、中途半端では終わりたくない みんな想いがある、中途半端では終わりたくない

「みんな想いがある、
中途半端では終わりたくない」

「大きな課題は3つありました」(高山)。まずステッチ。美しいステッチラインは、本革の質感をさらに高めることができる。しかし、「直線を描くのが難しい。まっすぐなステッチラインで貼り込むにはどうしたらよいか、みんなで試行錯誤を重ねました。曲がっていると不快感を与えてしまうので」(杉本)。

2つ目は接着。「どんな環境でも表面が変化しないようにするには、インストルメントパネルにムラなく接着させる必要がありました」(吉田)。そのために専用の接着・圧着機を開発。決してフラットではないインストルメントパネルに、均一に接着剤を施し圧着する。

そして3つ目の課題は外観、主にシワの問題だった。シワは本革という“生き物”ならではのもの。「引っ張る方向によってシワの出方が変わる。どうしたらシワが消えるか、何度も手作業を続けていく中でつかんだことをマニュアル化していきました。みんな中途半端で終わりたくないんですよ。それぞれに想いがあるんで」(杉本)。

みんな想いがある、中途半端では終わりたくない みんな想いがある、中途半端では終わりたくない

実は、この開発が本格的にスタートしてから約1年という驚くほどの短期間で量産化を実現している。部署を越えたスピーディな連携や、「開発棟の敷地をポンと与えてくれた、会社の完璧なサポート」(高山)も功を奏したのだろう。でも、その理由を訊ねても「自分の腕がよかったから?」(兼政)、「上司に恵まれたのでは?」(杉本)などと冗談を言って返すこの明るさが、大きく貢献しているのではないか。

開発は楽しく、楽しいからこそアイデアは生まれます 開発は楽しく、楽しいからこそアイデアは生まれます
開発は楽しく、楽しいからこそアイデアは生まれます 開発は楽しく、楽しいからこそアイデアは生まれます

「開発は楽しく、楽しいからこそ
アイデアは生まれます」

兼政は語る。「開発を進めていく中で、いつも気をつけているのは、どんなに苦しい時でも楽しい雰囲気であること。そうであればあるほど、アイデアは次々に生まれると思います。トップの人間が声をかけてくる時も、必ず“楽しんでるか?”と訊く。楽しく開発していこうという会社の風土があるんです」。お気に入りの場所を訊ねても「開発棟」と答えが返ってくる。働いている現場がいちばん好きだという理想。

量産化を実現した今を「まだ途中段階だとしか思っていない」(兼政)と言う。現時点では、あくまで高級車向けの技術だが、さらに量産体制が整えば一般車にも提供できる技術になっていくかもしれない。それに世界各地にあるマレリ(旧カルソニックカンセイ)の生産拠点でも、同じ技術で量産することが可能になるはずだ。掲げた目標に向かって、次へのチャレンジは続く。

開発は楽しく、楽しいからこそアイデアは生まれます 開発は楽しく、楽しいからこそアイデアは生まれます
開発は楽しく、楽しいからこそアイデアは生まれます